これが認知症なんだ (145) 徘徊
<That's Ninchi Show No.145 >
徘徊をどうするか。家族が同居していても24時間監視などできない。
老人マンションに入居するとき、一番の悩みは徘徊への対処だった。施設なら、夜間も複数の職員さんが当直していて、その心配はない。
だが、簡単には施設入所はできないから、次善の策として老人マンションを選んだ。認知症ではヘルパーさんに来てもらっても、24時間対応でなければ、一人暮らしを続けてはいかれないからだ。
家族が同居するという手もあった。が、おばあちゃんの家は大地震のあと再建するときに費用の関係もあって、以前より狭くなった。一人か二人用の大きさだ。
また、仮に家族が同居していても仕事や学校に行くから、24時間の見守りができるわけがない。毎日デイサービスに行ってくれればいいが。デイサービスが嫌いで行かなくなった人だから、どうしようもない。ヘルパーさんは一日せいぜい一時間だ。
何よりも、認知症老人の世話をする、その自信がない。一日でも、一緒にいると頭がおかしくなりそうだった。
その何日間かで、一人で認知症老人の世話などできないと悟った。よほどの体力や気力がなければ無理だ。眠れない日々が何年も続くかと思うと。
老人マンションは出入りは自由だ。一階の玄関脇に事務所があるが、いつも誰かが玄関を見ているわけではない。徘徊の心配がある人のことは考えられていない。
ケアマネージャーさんに相談すると、「センサー付きの玄関マット」を勧められた。おばあちゃんが自室の玄関を出ると、センサーが知らせてくれる。それはいい。が、高価だ。手が出ない。
GPS 付きの携帯、という方法もある。が、おばあちゃんは携帯を持っていない。携帯を持つという習慣がなければ、買っても持って歩くことはないだろう。
徘徊する時は、バッグすら持っていかない。着替えもせずパジャマのままで、鍵も財布も何も持たずに出かけていたぐらいだ。
警察にも相談した。名前、住所、生年月日を登録し、家族の連絡先も伝えた。徘徊老人を保護した場合は登録してあれば、連絡をくれるという。
ただ、本人が名前を言えないこともあるから、衣服に名前を書いておくように言われた。パジャマでうろうろするなら、パジャマにも書くようにと。この警察の所轄管内であれば、これで問題は解決する。が、電車で他の地域に行ったらどうしようもない。
徘徊の問題は解決できなかった。が、入居して、なぜか徘徊はなくなった。老人マンションのある地域は、おばあちゃんはなじみがなく、出て行こうという気にならなかったのかもしれない。何が幸いするか、わからない。