これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (144) 否定しない

<That's Ninchi Show  No.144 >
 
認知症老人の言うことはメチャクチャでも、「否定してはいけない」そうだ。
 
どこの施設でも、そう言っていた。どんなおかしなことを言っていても、「違う」とは言わないようにしていると。介護職の人々は、そういう対応の方法を習得され、実行できているのだろう。
 
当然ながら、家族は全然対応方法を知らない。ある日突然、認知症とつきあうことになったわけだから。それまで認知症の老人を見たことがない人だって多い。
 
おばあちゃんの頭の中では、「娘夫婦は離婚」「息子は失業」「孫娘は近所の眼科の若先生と婚約」など、ありもしないストーリーがその時その時でいろいろと展開されている。
 
娘が離婚して戻ってきたら・・とか、息子が失業したら・・とか、孫娘が適齢期を過ぎたら・・とか、いろんな心配が頭の中で形になって、なぜか現実にあること(事実)のようになってしまう。そして、それは衆知の事実として発言される。
 
それを「否定しない」のが、認知症老人に対する適切な対応なのだろうか。「孫娘の婚約」はいいとしても、あとの二つは否定したほうがいいように思う。心配や不安をなくすために。不安は認知症の異常行動を起こすもとにもなるから。
 
ところが、「失業なんかしていないよ。ちゃんと今日も会社に行ってる。」と言っても、おばあちゃんは信じてくれない。何回言っても、誰が言っても信じてくれない。
 
「うそばっかり。隠しているんでしょ。知ってるんだから、みんなで隠していることは。何で本当のことを言ってくれないの」と、自分だけが家族から「のけものにされた」、そんなふうに受け取ってしまう。疎外感で怒り出す。
 
それとも、「離婚したけれど復縁した」とか「再就職できた」とか、話を合わせながら、より現実に近い方向に、いい方向に話をもっていくのがいいのだろうか。演技力や話の創作能力が必要になる。上手にウソの言えない人には難しい注文だ。
 
または、何も言わずに話をはぐらかせる、そういう手もある。ありえない話に「そうだ」とも言えず、いつも何を言ったらいいのか困って、別の話をしていることが多い。
 
何が適切なのだろう。何年も認知症とつきあっていても答えが出ない。