これが認知症なんだ (139) 血中酸素濃度
<That's Ninchi Show No.139 >
酸素吸入をすれば、いつでも頭が働くようになるのでは?という気がする。
おばあちゃんの病状(脳梗塞の疑い)について、老健(介護老人保健施設)の医師に説明してもらいに行った。このときは、さすがに弟もついてきた。持病がいくつもあって外出は苦しいが、今を逃すと生きてるうちに会えないかもしれないと思ってか。
意識レベルが低下し、血液中の酸素濃度が極端に減少していたそうだ。酸素吸入をして、血中酸素濃度が正常値に戻ったら、少しはしゃべるようになったという。酸素吸入の必要はないから、その後は栄養点滴だけだった。
三ヶ月ぶりに息子の姿を見て、何か言うかと思ったが、無反応だった。わからなくなっているのだろう。弟は「うれしそうな顔をしたような気がする」と言っていたが、どうだか。
大きな声で話しかけても、聞こえてないのか、反応がなかった。
あきらめて帰ろうと、「帰るよ」とノートに大きな字を書いて、見せたが、以前のように声を出して読むことはない。もう読めないのだろうか。すると突然ノートを指さして、「写真、写真」と言う。
家族の近況を知りたいだろうと、ときどき手紙のなかに写真をはさんで送っていた。そのことを思い出したのかもしれない。
その数枚の写真はビニールのファスナー袋に入れてベッドの横に張ってあった。そのまま、それを渡すと、いろいろ思い出したのか、突然、長々と話し始めた。
脳梗塞の後遺症か、発音が不明瞭、ろれつがまわっていないようで、聞き取りにくい。聞き取れても意味がわからない。たとえば、「お米は90グラムが標準だから」など。何のことやらさっぱり。
前後の話とまったく関係なく、突然、そんなふうだ。また、ファスナー袋を指して、「マスクはこれに入れてある。大事なものは、とられたらいけないから。なくなったら困る、大事なものはこれに入れてある。」と言っていた。
わからないけど、目を見て真剣に言っているので、「わかった、わかった」とうなずいて写真の袋を片付けようとしたら、「頼んだよ、お姉ちゃん」とはっきり言うのには驚いた。誰が誰だか、区別がつかなくなっていると思っていたから。
しかし、いったい何を頼まれたのやら。「お姉ちゃん」と呼ばれるのは半年ぶりだ。その時はまだ歩くこともでき、左手も動いていた。半年でとうとう寝たきりになった。もうこの次はないかもしれない。しゃべれるだけ、まだましだと思わないと。
ふだんより、たくさんしゃべったように思われる。病後でぐったりしてるかと思ったのだが。脳梗塞でも、軽い場合は酸素吸入だけで回復するようだ。
認知症だと、日常的に脳の血行不良と酸素不足が起きているから、酸素吸入をして血中酸素濃度を高めてやると、頭が働くようになるのでは? そんな研究はないのだろうか。
(2012年1月)