これが認知症なんだ (126) 亜急性期病棟
<That's Ninchi Show No.126 >
おばあちゃんは「拒食」が始まって二ヵ月後、突然「拒食」が終わった。普通の低カロリー点滴だけでは、二ヶ月持つか持たないかだった。「生きてるのが奇跡」と他の病院の医師に言われたぐらいだ。
崖っぷちで、引き返してきた。理由は医師にもわからない。なぜ食べる気になったのか、本人に聞いても答えられないだろう。認知症だから。
七月十日ごろからミキサー食を食べれるようになり、数日後には自力で(食べさせてもらうのではなく)全量食べれるようになった。一ヶ月後、病院のメディカルケースワーカーさんから電話があった。「亜急性期病棟」に移すと。
聞いたこともない。尋ねると、退院が決まった患者さんが、退院までの間を過ごす病棟だという。では元気になった人ばかりかというと、そうでもない。寝たきりで、動けない人もいるそうだ。次の病院(老人病院など、療養型病院)に移る予定の。
急性と慢性の、その中間の患者。亜急性とは、そういう意味だそうだ。ナースの人数が減るとか、何か違いがあるのだろうか。
ほっておかれる、それもしかたない。おばあちゃんには、特に入院治療するほどの病気はないから。食事をとらないために施設を追い出され、入院させられたわけで。
駅から近い、大きな総合病院の付属の老健は、550人も待機していた。定員が120人で。「特養」とかわらない、この倍率では。こうなると、施設を選ぶなど不可能だ。早く入所できそうなところにする。駅から遠く、周りにコンビニすらなくても。
その50人待ちの所でも、入所できたのは十月十八日だった。定員が140人、個室や二人室が多く、大部屋が少ない。
前にいた施設は大部屋だったから安かった。洗濯代を入れて十万円。今度はそれに加えて、室料負担が毎月三万円かかる。それでもここしかない。
病院から老健へ移るのに三ヶ月もかかる。老人の長期入院の解決策として、老健があるのでは? この例では、まったく本来の役割を果たしていない。長期入院になってしまったせいか、おばあちゃんは入院前は歩いていたが、退院時は車椅子だ。
長い間ベッドの上だけで、動かなかったから、両足の関節までかたまっている。「拘縮」という。車椅子のステップに足がきちんと乗らない。足首の関節が動かないから。「尖足」というそうだ。立ち上がることもできない。もう「寝たきり」同然だ。
「在宅」で家族が看取る、それができる家族がどれだけいるのだろうか。「老老介護」や一人暮らしの老人はどうする?昔の大家族の時代とは違う、「個の時代」になって、今さら「家族」を持ち出されても困るのだが。
(2011年11月)