これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (85) 記憶が戻った

<That's Ninchi Show  No.85 >
 
認知症でも、発病前のように話ができることもあるんだ。
 
いつものように老人マンションのドアを開けると、またいつものように怒声が。
「何しに来たん?」  おばあちゃんは、この数週間ずっと機嫌が悪い。
 
「今日はシャンプーの日だから」と言うと、おばあちゃんは「まだ三日しかたっていないから、洗わなくていい」といつもと同じように拒否。

実は一週間以上たっているのだが、かゆくも臭くもないのだろうか。
 
この日は特に機嫌が悪かった。なぜか、よくしゃべる。いつもと違って。どうやら昔の記憶が戻ったようで、たて続けにグチを言う。

姑の悪口がほとんど。お嫁に来た時の嫁いびりから、姑の最期を自宅で一人で世話した苦労話まで。
 
家計が苦しくて内職(仮縫い)をしたが、一枚150円のわずかな稼ぎまで姑が浪費してしまったとなげく。

そのようなつらい思い出を次々と怒りながら、泣きながら話すから、本人はどんどん機嫌が悪くなる。
 
聞いてるほうもうんざりだ。発病前に何回も何十回もいやもっと、聞かされてきた苦労話だったから。
お嬢さん育ちだったので、貧乏は特別に耐えられなかったようだ。
 
どうして突然記憶が戻ったのか不思議だ。
お正月に家族が集まって、それが脳に刺激を与えたのだろうか。

しかし、去年の正月は何も変化がなかったから、それではないだろう。
どうせ戻るなら、楽しい記憶が戻ったらよかったのだが。
 
八十年の人生、楽しいこともたくさんあったはず。
それが全部消えてしまった?

「楽しいこと」より「苦しいこと、つらいこと」のほうが脳に強く刻みこまれている、そういうことなのだろうか。