これが認知症なんだ (82) 太ったな
<That's Ninchi Show No.82 >
認知症でも一年に一回しか会わない孫を覚えている。
記憶がどこまで残っているかは、よくわからない。普通の老人は、古い記憶ほど残っているというが、おばあちゃんは今では昔のことなど何もしゃべらないから、覚えているかどうか。
新しいことは覚えられないと言われているが、何人ものヘルパーさんの名前をなぜか覚えている。なかには名前と人物が一致せず、誤って記憶しているのもあるが。
お正月に家族が集まって、おばあちゃんの反応を見るとよくわかる。記憶に濃く残っているのは、やはり年長者、年の順で記憶が分かれる。
一番年上の孫(30歳)はしっかり覚えていて、生まれたばかりの「ひ孫」は影がうすい。生まれた時もそんなにうれしそうでもなかった。発症前は待ち望んでいたのに。
おばあちゃんにとって、妹の長男は初孫で、よく世話をしたから格別なのだろう。「誰かわかる?」と尋ねても名前は出てこなかったが、孫だとはわかっている様子。
名前を教えると思い出したようだった。顔は覚えていて、「太ったなぁ!」と言う。確かに去年と比べて太めになっている。三十歳を超えると太りやすい。一年ぶりに会って、違いがわかるとは意外だ。
一番年下の孫は、夏休みにも秋の連休にも会っているのに全く覚えていない。見たことはあるなという程度だろう。「この子、誰?」と聞いてくるから。説明すると、そんな孫もいたなぁという顔をしている。名前も顔もすっかり忘れている。
みんなで食事中、おばあちゃんは何回も「太ったなぁ!」を繰り返していた。少しばかりショックだったのかもしれない。