平然、ゆったり、丁寧、これが理想だが・・・
認知症の人への対応は、次の三点が基本になるそうだ。
1.驚かせない 2.いそがせない 3.自尊心を傷つけない
それからすると、家族が心がけることは、これ以外に次の三点が考えられる。
1.驚かない 2.いそがない 3.敬意を忘れない
驚かない(平然と)
認知症老人は家族の驚く姿を見ると、どう思うだろう。
何を見ても驚かない。初めて見ても何回も見たかのような顔をする。
施設の職員さんのように、冷静に落ち着いて処理するのが理想だ。
いそがない(ゆったり)
早く何とかしたいと思っても、認知症に関しては「何ともならない」ものだ。
成果は出ないし、未来の展望もない。「早く・・」という気持ちは捨てる。
家族のイライラ、焦りと落胆の様子を認知症老人に見せてはいけない。
敬意を忘れない(丁寧に)
何から何まで認知症の親に代わって行うようになると、立場が逆転する。
保護者という立場から、ついつい子供に言うように命令口調にもなる。
認知症老人は内容は理解できなくても、命令されたという事実はわかる。
しかったりすると、心の中はどうだろう。くやしい思いでいっぱいだろう。
「こんな情けない身になった上に、若い者にえらそうに言われて・・」と。
敬意など持てないような状態でも、そこはヘルパーさんたちを見習って、
一歩も二歩もひいて「丁寧語」で穏やかにゆっくり話すことだろう。
以上、あくまでも「理想」、現実は難しい。余裕がないとできない。心の余裕が。
実際、わかっていても実行できる人は少ないだろう。
わかっていてもできない、そのジレンマで、自分を責めることもある。
認知症老人と暮らすのは、毎日毎時毎分、突発的に事件や事故や天災があるようなものだ。それくらいのストレスが絶え間なく続く。
その中で平然とするには、「心頭滅却すれば火もまた涼し」の胸中だろう。修行僧ではないのだから、普通の人間がここまで心の修養を積めるかどうか。不可能だ。
理想は理想、できることだけでいい。それしかないだろう。