これが認知症なんだ (78) 時間
<That's Ninchi Show No.78 >
時間の感覚はどうなってるのだろう。認知症には「時間」はない?
毎週老人マンションにおばあちゃんが何十年も通っていた美容室の店長さんが来てくれる。入居前からシャンプーに通っていたので、頼んでこの三年間ずっとシャンプーしに来てもらっている。
近くはない。地下鉄だと15分くらいだが、店からは駅まで歩くのを入れたら30分はかかるだろう。それでも夏も冬も、お正月を除いて毎週来てくれている。
この日はおばあちゃんの精神状態は異常だった。正確にはいつも異常だから、いつも以上に格別はなはだしく異常だった。もう店を出てる時間に、今日はシャンプーしたくないから電話して断ってくれと言う。
理由は、まだシャンプーしなくていい、三日前にシャンプーしたばかりだからだと。
一週間前が、三日前なんだ。おばあちゃんの頭のカレンダーでは。しかし、一週間も洗ってないで頭がかゆくないのだろうか。くさくもないのか。そんな動物的な感覚まで失ってしまったとは。そこまでとは思わなかった。
ヘルパーさんが入浴させに来てくれたときも同じだった。昨日お風呂に入ったばかりだから、はいらなくていいと言う。本人は「昨日」と思っているようだが、それは三日前のことだ。一週間に二回しか入浴介助は頼めないから。
おばあちゃんの頭の中では時間は動いていない、時々とまっているのかもしれない。寝てばかりいるから、一日の感覚もずれているのだろう。
一週間が三日で、二週間が一週間になっている。訂正はきかない。