これが認知症なんだ (74) 入浴拒否
<That's Ninchi Show No.74 >
認知症の老人に言い聞かせる、そんな方法は何かないのだろうか。
やたらと吠えてうるさい犬を訓練する方法がある。訓練施設から帰ってきたら必要な時しか吠えない、いい犬になるらしい。犬でできるなら人間だってできるのでは。
脳が少し壊れていても人間なのだから、「ガマン」できる老人になれるのでは? が、犬のほうが記憶という点では上かもしれない。訓練しても記憶できないとなると定着しないだろう。
できることが少なくなった。できないことばかり。肝心なことは何もできないが、よけいなことはできる。それが不思議だ。医師の質問には答えられないし、ヘルパーさんにお礼も言えない。が、罵倒する言葉、悪口は次から次へすらすらと出てくる。
もとはきれい好きだったおばあちゃんだが、なぜだか入浴をいやがるようになった。一週間にたった二回の入浴、それがガマンできないらしい。ヘルパーさんの手をひっかいたり爪を立てたりして抵抗する。犬や猫を洗うほうがずっと簡単だろう。
清潔にしておかないと、おしめかぶれや、床ずれといった皮膚炎がおきる。だが、そんなことを言っても理解できないだろう。嫌いなことは嫌い。それしか頭にはない。抵抗が激しいと、最後には根負けして入浴はパス、身体を拭く程度になる。
ヘルパーさんによっては、何かコツがあるのか、毎回すんなりと入浴させる、そんな技能を持つ人もいる。おばあちゃんもこの人には抵抗せず、ひっかくこともない。
犬の訓練士に通じる、そんな何かがあるのかもしれない。経験から会得したものだろうか。「介護力」の差が出てくる。さすが、プロは違う。
注: 入浴拒否も、介護拒否の一つだそうです。世話をしてもらうのを嫌がるなど考えられないことで、
関係者以外は知らない人が多いかもしれません。