これが認知症なんだ (73) 脳梗塞
<That's Ninchi Show No.73 >
脳梗塞の前兆に、主治医がなぜ気がつかなかったのか。
七年前からずっとおばあちゃんを診てきた医師である。老人マンションに転居後も特別に頼んで訪問診療という形で、この医師に月に二回診てもらっていた。
それでも結果は脳梗塞が起きた。が、運動障害もなく、軽くすんだのは、まじめに薬を飲んでいたからとも言える。二回目は、こんなに軽くはいかない、命にかかわるぐらいになるかもしれないと言われていた。
脳梗塞が再発したのは、この主治医の訪問診療が水曜日にあった、その週の週末だった。何年も診てきている医師が前兆に気がつかなかったとは。
医師が気がつかないのに素人の家族やヘルパーさんが気がつくわけがない。ケアマネージャーさんが気づいてくれたから、早く処置ができて二度目も軽くすんだ。
その二週間前に血液検査をしていて、電話で医師から結果を聞かされていた。血液はサラサラ、どこも悪くないと。健康そのもので、悪いのは頭だけ、などと言って笑っていたぐらいだ。
検査のデータだけで安易に判断するものではないとあとで思い知らされた。データ偏重の医療は問題がある。数値だけを見ずに全体を見るべきだ。
入院して驚いたことに、おばあちゃんの頭の働きがすこぶる良くなった。「○○さん(ケアマネージャーさんのこと)が来たよ」と言うから、また妄想だろうと思っていたら本当だった。
ケアマネージャーさんに電話で確かめたら、出勤前にお見舞いに来てくれたらしい。家族のように心配してくれて、ほんとうに有難い。家族としても心強い。
それにしても、数時間も前のことが正しく記憶できているとは驚きだった。
酸素吸入と脳の血流回復の措置で、まるで認知症が治ったかのように見えた。しっかりと話ができる。よどみなく、よくしゃべる。ただ、しばらくすると妄想や作り話になって「やっぱり」とがっかりしたのだが。
老人が突然しゃべらなくなると、それが認知症のせいか、脳梗塞のせいか、見た目では全然わからない。うつ病とも区別がつきにくい。もし精神科に連れて行ったら、老人性うつ病と診断される。脳の検査は定期的に行う必要があるだろう。