これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (19) 不安 その1

<That's Ninchi Show  No.19 >
 
不安が妄想を生むらしい。では不安を消せば妄想は防げる?
 
おばあちゃんは足が痛い、しびれると言って、近所の整形外科に通っていた。整形外科的には悪いところはなく、診療というよりマッサージをしてもらうだけだが。
 
トイレに行く以外、一日中寝てばかりいて歩かない。動かさないから血流が悪くなり、足はこわばって石のように重くなり、ますます歩くのが嫌になる。
 
動かすように言ってもきかない。トイレに行きたくないから、水分をとるのも控えるぐらい、とにかく歩きたくない。立ち上がるのも嫌、歩くのも嫌。
 
その整形外科から電話があった。「もうとっくにマッサージが終わってるんですが、ご本人さんが帰ろうとしないんです。息子が迎えに来るからと言われて。」
 
一時間も待合室に座り込んで動かないらしい。診療所も困っているようだ。
 
何のことやら、突然どうしたものか。迎えに行く話など聞いていない。一人で行ったのに一人で帰れないわけ? 急に歩けなくなった?
 
整形外科に確認すると、まったく異常はなく、一人で歩けるという。仕事があるのに平日に迎えに行けるはずがない。約束するわけがない。
 
今まで一度も迎えに行ったことがないのに、そんなことを思い込むなんて、全然理解できない。もともと思い込みの激しい人ではあるが。
 
今から思えば、すでに認知症が始まっていて、帰り道がわからなくなったからだと理解できる。当時は老人性うつ病か何かだと思っていたから、驚くしかなかった。
 
他の患者さんが迎えに来てもらっているのを見たんだろう。一人で帰るのが不安だった時に。来てくれたらいいなという思いから「お迎え妄想」が成立してしまった。
 
この件からあとは、整形外科に相談して、自宅まで来てもらう 「訪問マッサージ」 を頼むことになった。費用も少し高くなるだけだったので。
 
週二回も家族が送り迎えすることはできない。往復四時間ちょっとではきつい。
二週間に一回の内科受診は土曜日に連れて行くことにした。もう問題はない。
 
「一人で通院する」という不安は解消できたはずだ。これで一件落着かと思ったが、しばらくして近所に住む親戚から、もっとびっくりする話を聞かされた。
 
おばあちゃんが早朝パジャマ姿で向いの家の前に座っていたと。また、別の時には、朝早く玄関ドアを開けたり閉めたりして、誰かが来るのを待っていたようだと。
 
不安は途切れることがない。不安はいくつも出てくる。妄想もいくつも作り出される。努力して一つ不安を消しても、すぐに次々と。
 
妄想は防ぎようがない。