これが認知症なんだ (18) 家族 その2
<That's Ninchi Show No.18 >
妄想は、いつも身近で世話をしている人を悪者にする。
最初はヘルパーさん。自分で捨てたり、なくしたり、しまった場所を忘れてたりして、物がみつからない時はすべて、「ヘルパーが盗んだ。でも言わないでおく。高いものじゃないから。」 とまわりにグチを言う。
直接ヘルパーさんに向かって「どろぼう」と言ってないだけましだが、「そんな年寄りの服を盗むわけがない」と言っても理解してくれない。
次は家族。親戚の人から電話があった。おばあちゃんが貸し金庫を見に行きたいから連れて行ってくれと頼まれたとのこと。そんなことは初めてだ。
親戚の人によると、数日前に息子が貸し金庫に行っているから、盗まれてるかもしれない、心配だから確認したいと言って、かなり興奮しているらしい。
「盗むわけがない」とじっくりと説明してもまったく考えはかわらない、どうしようもないという話だった。
何十年も毎月仕送りをして、大地震のあとに家を建て直す費用まで負担した。
その息子がおばあちゃんのわずかな貯金を盗むなどと、何で考えつくのだろう。
有料老人ホームの入居一時金にもならない、高いところなら。
娘が持ってきたお弁当を、「毒が入ってるから食べない」 と捨ててしまったこともある。おばあちゃんの財産をねらって毒殺しようとしてるという妄想だろう。
どこにも行かず、テレビばかり見て過ごしているから、頭の中はサスペンス(二時間ドラマ)だらけなのかもしれない。
時間を、金を、労力を使って、結果はこれだ。 とてもやってられない。家族は特に。
認知症老人の介護は経済的負担だけでなく、精神的負担が大きい。
家族のかかわり方が大事だという。が、認知症がどんなものか知らず、突然対処するはめになり、途方にくれるだけ。老人の言葉を否定してはいけないともいう。しかし、あり得ないことばかり言うのに、否定しない?
精神科の知識もなく、カウンセリングの技術もない。普通の人間が、家族だからといって24時間の介護ができるものだろうか。
認知症老人は何をするかわからない、一人にしておけない。ある意味、精神病患者と同じだから。放置すると他人に迷惑をかけることになる。
家族介護は限界がある。無理してがんばると、家族のほうが精神的ストレスで心身症などを発病しかねない。がんばらないで、一部は介護のプロに任せるようにしないと、家族のほうが倒れてしまう。
しかし、そこで費用の問題が出てくる。介護保険外の費用を払う余裕のない場合は、やはり家族が介護するしかない。悪者にされ、ののしられながらも。
それでも介護を続ける、家族だから。これが認知症老人の家族だ。