これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (303) 手順

<That's Ninchi Show  No.303 >
 
一連の動作の「手順」がわからなくなること、脳の認知機能障害の一つだ。
 
歩くという動作は、右足を出して、次に左足を出す。この二段階の手順だが、そんな簡単なことを普通の人間は誰も考えて行ってなどいない。できてあたり前だから。
 
ところが、認知症老人は違う。右足を出したあと、また右足を出そうとするから、ちゃんと歩けない。転びそうになる。それでますます歩くのが嫌になり、寝てばかりいる。
 
たったこれだけ、二段階の手順を思い出せない、信じられないことに。
 
歩くのが困難になったころ、うちのおばあちゃんは老人マンションのドアの鍵も開けられなくなった。もちろん鍵をかけることもできない。入居してすぐのことだが。
 
手順としては、鍵を鍵穴に入れる、そのまままわす、この二段階だけだ。鍵が開いたら、鍵を鍵穴から抜く、というのも加えると三段階だが。
 
これでは一人暮らしなど絶対に無理だ。老人マンションに入居していてよかったと思った。あやういところだった。自宅にいたときはできていたから。
 
鍵から始まって、電子レンジ、ラジオ、テレビやエアコンのリモコンなど、次々と使えなくなった。それまでできていたことの手順がわからず、操作ができない。
 
できないことが増えると、本人の不安感も増える。鍵がかけられない、となると食事時間にまにあうように食堂に行けるだろうか、という心配も出てくる。
 
おばあちゃんの場合は入居当初から食事介助を頼んであるので問題はない。食堂に行く時も帰りも、どちらも食事介助のヘルパーさんがついてくれているから。
 
これに関しては、周囲が気をつけて見ていく必要がある。それまでできていることが、突然できなくなると本人も精神的にきついし、パニックにもなるだろう。
 
何かしようとしても手順がわからず、頭の中が「?」だらけになり、一日中誰かに頼るようになる。わからないから、家族を四六時中おかまいなしに呼びつける。
 
周囲には迷惑な話だが、本人はそれによって増大していく不安感を減少させているのだろう。そうしないと、ストレスでよけいに脳神経細胞が死滅し、認知症が進む。
 
家族のほうにストレスは移動するのだが、甘んじて受けねばならないのだろうか。