これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

FC2ブログに引っ越しました。週一回か二回は更新しています。

これが認知症なんだ (12) 誕生日 その1

<That's Ninchi Show  No.12 >
 
自分の誕生日をまちがえるなんて、あり得ない。
 
認知症老人も、絶対まちがうはずがないと確信している。そんなことあり得ないと。
本人は自信を持っている。それが思わぬ事件の原因になってしまう。
 
銀行から生活費がおろせなくなって困っているというので、事情を聞きに行くと、
何回も暗証番号を押しまちがったため、キャッシュカードが使用不能になっていた。
 
おばあちゃんは自分の誕生日を暗証番号にしていた、他の番号だと覚えられないと言って。危険だから他の番号に変更すればと忠告しても聞かなかった。
 
ところが本人は、誕生日ではなく、銀行の口座番号の頭4桁が暗証番号だと言う。
カードにも印字してある、その番号だと言い張る。その番号を押してもダメだったと。
 
「そんな番号を暗証番号にするはずがない、それこそ誰にでもわかってしまう。誕生日だったはず」と言うと、「誕生日の”1125”を何度押してもダメだった」と。
 
これでやっと納得できた。自分の誕生日をまちがっている。普通はあり得ないことだが。誕生日は11月28日、”1128”でないと機械はいうことをきかない。
 
しかも本人は自分がまちがうはずがないと思っている。だから、何回かトライして失敗したあとで、誕生日ではなかったんだ、口座番号だったんだという考えに至る。
 
そこで口座番号の頭4桁で再トライし、何回も何回も失敗して、みごとにキャッシュカードを使用不能にしてしまったというわけだ。
 
消えた(正しい)記憶を補うように、別の(誤った)情報がそこにおさまっている。誤っていても、本人の頭の中では、それが真実となっているから、どうしようもない。
 
認知症老人に誕生日はない。が、逆に、365日いつでも誕生日とも言える。