これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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男性介護士をこわがるわけは。。。

介護職員の中で男性はどこでも少数派だ。

介護というのは「力仕事」が多い。身体障害が重度になった人を介護するには腕力がいるので、男性の介護士がいると頼りになる。

しかし、どこの施設でも介護スタッフのほとんどが女性だ。「施設長」などの責任者を除いて。

やはり、男性には介護という仕事は向いていないのだろうか。

老人虐待の加害者は男性のほうが多い。家庭では息子や夫、施設では男性介護士。原因は一般的には「介護ストレス」だと言われている。

そういうことなら、認知症の人を介護している娘や妻、女性介護士だって「介護ストレス」は同じだけある。どこが違うのだろう?

「女はガマン強い」とか、「自分の思うようにならないことに慣れている」とか、「脳の使い方が男性とは違う」などと言われている。

いわゆる「男脳と女脳」理論?だが、女性がいくつもの仕事を同時進行でこなせるのに対して、男性は「一箇所集中的」なのだという。

言い換えれば、仕事の対象への距離が女性では「遠く、俯瞰的」で要点をおさえるだけなのに対して、男性は全く逆の方向にあるらしい。

「近く、集中的」で完璧をもとめる、そういう傾向があるそうだ。

ただ、脳の使い方や仕事への距離感といった違いだけで、虐待するかしないかという結果の差が出てくるとも言えないと思う。

同じ条件で同じ老人を介護するとして、男性のほうが介護しにくく「介護ストレス」が大きい、そういう可能性はないだろうか。

老人施設の入居者の多くは「おばあさん」だ。

おばあさんには「男性介護士がこわい」という気持ちが根底にあり、男性は介護しにくいという傾向があるかもしれない。

この人たちの世代は戦前に子供時代を過ごし、絶対服従を強いる「こわい父親」という家父長意識が植えつけられている。

幼少期に刷り込まれたイメージは老人になっても消えないだろう。

うちのおばあちゃん(84歳、胃ろうで寝たきり)は認知症の発症後しばらくして「サ高住」に入居し、去年の春まで6年ほど住んでいた。

そこのケアマネージャーさんを息子のようにかわいがっていて、とても信頼していた様子だった。徘徊することもなく落ち着いて暮らせた。

二年後にケアマネージャーさんが別の施設に転勤となり、新しいケアマネージャーさん(男性)が担当になったら、様子が変わった。

どうも後任者が嫌いなようで、おかしなことを言うようになった。

言うことをきかないと、ベランダに寝かされる」と何度も言っていた。「誰が」とは問いかけても言わないので不明だったが。

ベランダに出すというのは「お仕置き、罰」という意味だろう。

これを聞いた家族は皆、認知症の被害妄想だと思った。

本人がそういう教育をされ、本人も親の言うことを聞かない子供たちには「しつけ」として家の外に追い出すということがよくあったから。

その後しばらく、ケアマネージャーさんをはじめとして男性介護士をこわがっていた時期があった。表情からそれは読み取れたと思う。

同じ妄想が延々とどこまで長続きするのだろうと悩んだものだ。

訪問介護のヘルパーさんが女性ばかりになって妄想は消えたようだ。ケアマネージャーさんは同じ人(男性)だが、慣れたのだろうか。

この時は妄想だと思っていたが、誰かが「言うことをきかないと~するよ」というおどし文句を言ったのかもしれない。

認知症の人は言うことをきかないものだ。それを知らずに介護の仕事をしている人がいるとしたら、あり得ることだと思う。

「妄想なのか、事実なのか」が曖昧なのが認知症で、いくらでも虐待の事実を隠すことができる。そこが問題だし、難しいところだ。

             <That's Ninchi Show 2 No.1041>