これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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認知症の人の「できない」には。。。。

「できない」という思い込みは危険だ。

認知症は病気の進行に伴って「できないことが増える」のだが、それには「永久にできない」のと、「一時的にできない」のとがある。

一度「できないこと」になっても「ある日突然できる」場合がある。

筋力が衰えてしまって、手足が動かないから「できない」というのは別だ。それはリハビリなどで筋力を回復させない限り永久にできない。

整形外科的にどこも異常がなく、手足が自由に動くのに「一人で服が着れない」のは、脳の問題だ。手足の動かし方を思い出せないから。

思い出せないというのはそのデータが消えてしまった場合(永久に)と、回線不良でつながらない(一時的に)場合とがある。

脳の神経細胞のネットワークを電気回線にたとえるならば、そういうことだ。切れていた部分が「偶然つながる」ことを忘れてはいけない。

「鍵を開けられないから」と思っていると、意外にも「できてしまって」一人でお散歩に行ってしまうこともある。想定外の徘徊だ。

「電話機の操作はできなくなった」はずの人が、一人にしていると救急車を呼んでしまうこともある。身体はどこも悪くないのに。

想定外のことが「たまにではなく」頻繁に起こるのが、認知症だ。

親が認知症になって「想定外のことが日常的に起こる」毎日になり、それに慣れていたつもりだったが、どうしても思い込みはあった。

ずっとできない状態を見ていたら、できるはずがないと思ってしまう。

うちのおばあちゃん(84歳、胃ろうで寝たきり)は去年から一般の老人ホームで暮らしている。左半身不随、右手しか動かせない。

先日、毎日35度の暑さが続いていたある日、妹から信じられないメールが来た。おばあちゃんがコップの水を飲んでしまったという。

施設のほうでは誤嚥性肺炎を心配して充分に経過観察してくれ、特に異常もなく、無事だったのでよかった。

誰も見ていない隙に、認知症の本人がコップを手に取って、口まで運んだらしい。そんなことがあるとは誰も思わないだろう。

胃ろうを付けてから、もうすぐ二年だ。二年近くも食べ物も飲み物も何も口にしていない。「飲む」という動作を忘れていると思った。

「コップを取る」「口まで運ぶ」「水を飲む」という動作を覚えているとは、意外だ。突然ネットワークがつながって「できた」のだろうか。

認知症の人は「思いがけないことをする」ことがよくある。介護する側は「できない」という思い込みを持ってはいけない。

胃ろうで寝たきり、終末期とされ、何も考えてなさそうに思える人だが、「暑いから水を飲まないと」とでも思ったのだろうか。

不思議なできごとだった。認知症の人の頭の中を知りたいものだ。

            <That's Ninchi Show  2  No.1010  >