「介護拒否はありますか」の答えは。。。。。
「介護拒否」はどれだけ知られているのだろう?
わが家でもそうだ。さんざん「介護拒否」で悩んだものだが、当初は「介護拒否」という言葉も、また、「何が介護拒否にあたるのか」も知らなかった。
うちのおばあちゃん(84歳、胃ろうで寝たきり)の訪問介護のヘルパーさんから電話で「ドアを開けてくれないので・・」と連絡が来た時は驚いたものだ。
介護拒否だった。他の症状(異常行動)と同じく、何の前兆もなく突然始まる。
何年も訪問介護を受けてきて、世話しに来てくれるヘルパーさんを家にいれないなどと、それまではなかったから。いつも期待して待っていたぐらいだ。
家に入れないのは、インターホンに出ない(無視する)とき、また、インターホンに出るけど「今日は帰ってください」と言って追い帰す時とがあった。
一人では何もまともにはできないのに、なぜ介護を拒否するのだろう?
掃除や買い物だけならいいが、介護してもらわないと食事もとれないし、まともに薬も飲めない場合、介護拒否は生存の危機にもつながりかねない。
もともと認知症の介護は難しく、介護する側に大きなストレスが加わるものだが、介護拒否があると困難さとストレスは何倍にもなる。
家族には「認知症の人」の生命と健康を守るという責任があるが、守ろうとしても守らせてもらえないとしたら、どうすればいいのだろう。
食事を用意しても食べないとか、薬を飲ませようとしても飲まないとか、医者に診せようとしても「診療拒否」されたら、どうしようもない。
ふらふらになって診療拒否もできなくなった頃に医者に診せると、「極度の栄養失調」だと言われる。家族が「介護放棄」していたと疑われることだろう。
「食べてくれないから」と説明して、医師はわかってくれるだろうか。一般の内科医に認知症の知識がどれだけあるかによるだろう。
「空腹になったら誰でも食べるだろう」という素人と同じ程度の認識かもしれない。認知症の人には空腹感も満腹感もないことがあるのだが。
介護拒否は単なる老人のワガママではすまない。時には命にかかわる。他の症状もそうだが、とりわけ重大な症状だと思う。
ある老人介護施設の入所申込書に「介護拒否はありますか」という質問があったが、素直に「あります」と書いていいのだろうか。
どこの施設も介護拒否の老人は受け入れたくないだろう。手間がかかる上にリスクが大きい。素直に書いたら、入所できないかもしれない。
施設が不足している現状では、施設に「選んでもらう」わけだから。介護が困難な人、手間のかかる人は選ばれない可能性が高い。
数年前に悩んだものだ。相談するところもなく、結局、「介護拒否を隠す」ことにした。うしろめたい気持ちはあったが、しかたがない。
入所には三年ほど待機期間があるので、その間におとなしくなるかもしれない。
そう思えば「うしろめたさ」は少しは薄らぐ。
今の施設に入所する時は別人のようにおとなしくなっていた。脳細胞の自滅が進んで介護拒否は消えたわけだ。
ただ、今の施設(一般の老人ホーム)の入所申込書には「介護拒否はありますか」の質問はなかった。堂々と「ありません」と書けるのだが。