介護施設を選ぶというより。。。。。
介護施設を選ぶことができるのは金持ちだけだ。
一ヶ月30万円以上支払う能力があり、入所後に十年二十年長生きしても、利用料が値上げされても、継続して支払えるだけの財産があればいい。
そういう人なら選べる。駅から近くて、環境がよく、入院できる総合病院も付近にあり、築年数が十年以内で、日当たりもよく、広い部屋を。
それ以外の一般庶民には「選ぶ」などとは夢のような話で、待機者の多い比較的安い施設に「選んでもらう」というのが現状、選べる立場ではない。
うちのおばあちゃんの今回の入所は「施設見学から約十日で入所」というスピードだった。どうしても五月連休の前の土日ですませたかったから。
長距離の移動で介護タクシーが渋滞に巻き込まれたら不安だし、引越し荷物の到着が遅れるのも困る。引越し業者の手配も難しいだろう。
「選べる」立場にない場合は、「空きがあったら即決」だ。迷っていたら他の人にとられてしまう。老人には「もっと条件のいい所を」待つ時間がない。
今回入居できたのは「空きが出て、待機者がいない」からだが、それには理由がある。第一として、家賃が高い。八万円、管理費は別で。
近隣のワンルームマンションより二万円ほど高い。ミニキッチンと浴室がないことを考えたら三万円は高い。その上に管理費が三万円付く。
神戸の老人マンションは家賃が九万三千円、それに管理費と生活サービス料が付いて十三万六千円だった。狭くなるが家賃はそうかわらない。
管理費は生活サービス料ということで全員定額、つまり家賃が十一万円というのに等しい。介護事業は家賃でもうけるしかないのか。
二番目には環境が悪い。おばあちゃんがしっかりしていたら「あんな下町には」と文句を言っただろう。高速道路に近く、空気は悪く、騒音もある。
そして第三に、部屋が寒い。北向きで、北側に窓があり、天気のいい日でも太陽熱とは無縁だ。どちらかというと暗めだ。
しかし、寝たきりの人はずっと布団の中にいるわけで、「こもり熱」で暑いくらいだから寒いのは問題ではないだろう。太陽光がなくても。
白内障が進んできているから、光刺激は少ないほうがいいかもしれない。それには東や南向きよりも北向きのほうが光が柔らかくていいだろう。
マンションは東向きだったので、おばあちゃんは「まぶしい」と言っていつも窓のカーテンをしめていた。光がさすのが嫌で。
それ以外は文句のない施設だ。開設から十年以上になるが、古びているようにもなく、きれいにしてある。室内もきれいだった。
条件を言い出したらキリがない。選びようのない環境ではしかたがないではないか。「空きがある」中から選ぶしかないのだから。
介護施設を選ぶことができる、そんな立場になりたいものだ。