これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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認知症、家族の顔がわからない。。。。。

顔と名前が一致しないことは、普通の人でもよくある。
 
脳の中で、画像情報ファイル(顔)と言語情報ファイル(名前)と分かれていて、目の前の人の顔を検索し、次に名前を検索して、情報が合致すると、「誰々だ」となる。
 
知っている顔なんだけど、誰だったか思い出せないことは、認知症でなくてもよくあることだ。だから、認知症の人が名前を言えなくても特に気にすることはない。
 
ついつい「私は誰だかわかる?」とか聞いてしまい、答えがなくてがっかりしてしまうが、名前は出てこなくても「娘だ」「息子だ」「嫁だ」と本人がわかっていることもある。
 
「顔はわかるが名前は出てこない」のが第一段階で、次に進むと「顔を見てもわからない」段階になる。家族の誰かなのか、友人なのか、知っている人なのかどうかも。
 
今回はそのレベルだった。脳梗塞で入院中のおばあちゃんの見舞いに行くと、挨拶もなく「名前、名前は?」と聞かれた。どうやら誰だか全くわかっていない様子だ。
 
「○子、嫁の○子です。お嫁さんの○子さん」と大きな声で何回も言ったら、思い出したような顔をして、「うちのお嫁さんは○子さん、○子さんは長いこと来てない」と。
 
目の前にいるのに、何回も見舞いに来てるのに、四十度近い酷暑の夏に遠くから電車を乗り換えて二時間以上かけて来ても、来たことになっていない。このむなしさ。
 
名前という言語情報はしっかり記憶されていて、嫁だと、家族の一員だという認識もあるのに、顔を覚えていない。誰だったのか、全く思い出せないようだ。
 
すると突然ひらめいたのか、「食堂に連れて行ってくれる?」と言う。病院でなく、老人マンションにいると思っていて、目の前にいるのはヘルパーさんだという認識。
 
「おなかすいたの?」と聞くと、「カーディガンとってきて」という答えで、全然こっちの言うことには答えてくれない。続けて「私のカバンちょっと見てみて」とも言う。
 
マンションでは食事時にはヘルパーさんが自室から一階の食堂まで連れて行ってくれている。この五年間ずっとだ。この三月までは歩いて、それからは車椅子で。
 
毎回ヘルパーさんにベッドから起こしてもらい、カーディガンを着せてもらって、カバンを持ち、食事に連れて行ってもらっている。まるっきり、それだ。
 
おばあちゃんにとって毎日世話をしてくれるヘルパーさんの存在は大きく、たまにしか来ない嫁は忘れられる。ヘルパーさんだと思われるのもしかたがない。
 
そういえば、前々回の脳梗塞の再発時も同じだった。車椅子におばあちゃんを乗せて点滴をしてもらうためにマンションの近くの診療所まで連れて行ったことがある。
 
それも本人はヘルパーさんが連れて行ったと思っていたようだ。あとで聞いた話だが、「お嫁さんは来てない」ことになっていた。十二月の寒い夜に駆けつけても。
 
この日、面会時間が終わると表玄関が閉まるのでその前に出ようと、「帰るね。また来るから、バイバイ」と言うと、おばあちゃんはキョトン。
 
しかたなく「カーディガン取りに行くから」と言って病室を出た。「バイバイ」が通じない、こんな簡単な言葉も忘れているとは思えないのだが。