これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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認知症のバランス障害。。。。。

認知症によるバランス障害が笑顔を消した。
 
認知症は脳の壊れる部分によって現れる症状が違う。多種多様、個人それぞれで、一人として同じではない。もちろん共通部分(認知記憶障害)はあるが。
 
うちのおばあちゃんだけを見ていたら「認知症は笑えない」と思うが、他の施設に行くと「認知症でも笑顔いっぱいで楽しく過ごしている」老人をいくらでも見かける。
 
アルツハイマー型は明るいというが、おばあちゃんはアルツハイマーでもあり脳血管性認知症でもあるという複合型だから、より症状がきつくて明るくできないのだろう。
 
おばあちゃんの症状の中でも、バランス障害を軽視し過ぎたかもしれない。
 
寝てばかりいると血流が悪化して誰だって「立ちくらみ」は起こる。「立ち上がるとふらつくから」と言って一人では起きようとしないのを「甘え」だと思ってしまった。
 
「台所で立つのがつらい」と言って台所仕事(炊事)を一切しなくなったことを、「なまけ」だと思ってしまった。立っていることがしんどい、それが理解できずに。
 
ただまっすぐに立つ、直立する、そんな単純なことができないとは普通は思えない。が、実はこれも脳のネットワークを正しく使ってこそ完成される動作の一つだ。
 
普通の人は何も考えずにできていることでも、認知症の人には難しい。
 
自分の身体の位置(傾き、角度)を把握し、重心をうまくとって倒れないように立つ。その動作はいくつもの脳細胞が連携し協力してはじめて成立する。
 
協力関係の脳細胞のどれか一ヶ所でも不具合があると困難になる。
 
おばあちゃんは「立ち上がるのがしんどい」から一日中寝てばかりいるようになった。横にならずに椅子に座っていればいいのだが、「座るのもしんどい」と言って。
 
座っているという動作も、バランスを保つことが困難だとやりにくい。前後左右にずるずると身体が傾いて、椅子から落ちそうになる。短時間なら何とかなるが。
 
おばあちゃんの場合、食事時間だけガマンして座り、あとはベッドに寝ているという生活だった。発病から五年間ずっと「ほぼ寝たきり」で、寝たきりになるまで。
 
自室にひきこもり、デイサービスにも行かず、老人マンションの催し(カラオケや映画、落語会など)にも参加せず、友人の来訪すらもことわって。
 
そういうことだから認知症が進む。たった五年で要介護1から要介護5になり、胃ろうで寝たきりにまでなってしまった。すべて本人が悪い・・・・と思っていた、昨日まで。
 
昨日ふと気がついて考え直した。「できるのにやろうとしない」のではなく、事実として機能的に「できないから寝ているしかない」状態だったと、今はそう思える。
 
「生きていても何も楽しいことがない」と言っていたのを聞いても、「どこにも行こうとせず、ひきこもっている本人が悪い」としか思えず、なぐさめる気にならなかった。
 
自分の身体の位置が把握できないと、自分で自分の身体を自在に動かすことも難しい。意のままに動くのがあたり前だった時には考えられない状況になる。
 
まるで「自分でない何か」に自分が閉じ込められたような気持ちだろうか。動きたくても動けない、そういうストレスを毎日、毎時、毎分毎秒、常に抱えて生きてきた。
 
そんなストレス状態が続いていたら、誰だって明るく笑ってなどいられない。この五年間は苦しみの連続だったのかもしれない。そして今も。これからも。
 
バランス障害について何も知らず、少しも理解してあげられなかった。認知症家族として認知症の知識や情報収集の必要性はわかっていたのだが。足らなかった。
 
脳が壊れるということは外からはわからない苦しみがある。表に出ないことが多く、普通の人には想像がつかない。苦しんでいるとは思いもよらない。
 
いつもながら失敗してからわかることが多い。あとになってわかっても遅い。