これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (361) 緊急ブザー

<That's Ninchi Show  No.361 >
 
認知症の人には緊急ブザーは役に立たない。
 
認知症の人は、緊急の時に緊急ブザーを押さない(押せない)で、どうでもいい時、緊急ではない時に何回も、ひどい時は一日に数十回も緊急ブザーを押す。
 
おばあちゃんの老人マンションにも三ヶ所、緊急ブザーが設置されている。トイレと浴室と、ベッドの側の壁に。押すと事務室だけでなく館内の全職員に通知される。
 
館内で一番近いところにいる職員がすぐに駆けつけるように、そういう配慮からだ。
 
これなら、転倒したり、急に体調が悪化した時にすぐに誰かに来てもらえるから、普通の老人なら一人でいても安心できるだろう。緊急時に緊急ブザーを押せる人は。
 
認知症の人のことは考えられていない。妄想にかられて緊急ブザーを押すことは何回もあっても、ほんとうに緊急の時には押せない、そんな人のことまでは。
 
うちのおばあちゃんは歩行困難だが、要介護1の頃はまだ一人で自室のトイレに行っていた。ある日、トイレの数歩前で転倒してしまい、起き上がれなくなった。
 
トイレの壁には低い位置に緊急ブザーが付いているから、そこまでハイハイするなり何なりして移動すれば誰かに来てもらえる。が、それができなかった。
 
数時間後、夕食の介助のためにヘルパーさんが来てくれてやっと発見された。その時はまだオムツをはいてなかったから、びしょびしょで何時間も床に寝てたわけだ。
 
頭を打ってもなく骨も折れてなく、意識もいつもと同じレベルで、脳梗塞の発作ということでもなく、ぶつけた所に消炎鎮痛薬の貼り薬を貼って、しばらくすると治った。
 
ちゃんと意識があっても誰か助けを呼ぼうという知恵は働かない。認知症だから。
 
ペンダント式の緊急ブザーを首からかけておいたら、とも思う。が、それも認知症でない普通の老人のためのものだ。かけておくのを忘れるだろうし、第一に危ない。
 
ペンダントだと、どこかにひっかけて「首つり」になってしまう危険性がある。
 
認知症の人には緊急ブザーはあってもなくても同じことだ。何回もつまらない用事で呼び出してばかりだと、誰も「ほんとうの緊急」だとは思わなくなるだろう。
 
頻繁に様子を見に来てもらうことしかない。せめて一時間に一回でも、安否確認を。それぐらいの環境でないと、認知症老人の一人暮らしは難しい。
 
老人マンションでは可能だが、一般の在宅介護では不可能に近いだろう。そういう意味では、老人マンションに転居してよかったと思っている。